YOSHIYA TADAKI 's web site 森林雑学研究室 Stories of Forest Ecology


  丹波栗って、おいしいんだよね~

ちょっとちょっとちょっと! 大きすぎない? この栗! 


だろう? 京都林大の職員室に飾ってあったんだ。
さすがにこれは特別サイズだけど、京丹波町は、クリの名産地なんだよ。じぃじ先生も、早速地元の味を楽しませてもらおうと思って買ってきたよ。
京丹波の名産は、ほかにもたくさんある。まさに実りの秋だ。



そうだ、味夢(あじむ)くん! 頭は黒豆、身体は栗で・・・。(→2012.5ちょっと教えて


そうそう。マツタケ、黒豆、シメジ、・・・いろいろあるけれど、やはり本命は「丹波栗」だそうだ。
京都林大のある和知には、JAの大きな選果場があって、京都丹波地方全域のクリはここに集められて各地に出荷される。10月はそれのピーク。選果場に直接申し込んで、宅配便で送ってもらう人も、最近は多いんだそうだ。



文字通り産地直送だね。じゃあ、和知には栗の木がたくさんあるの? 


あるある。実はあまり意識していなかったんだが、初夏の頃、通勤途中の車窓から、特徴のある白い花があちこちにいっぱい見えてね、実感したんだ。(→2012.6.28ひとりごと
実際、林大の裏にも試験林とはいえ、クリの林があるよ。



そうなんだ。クリって「日本の昔話」とかの印象が強いからかなぁ。藁ぶき屋根の家の横に生えてるイメージがある。


悪ガキがいたずらしてクリをとって、おじいさんに「コラっ!」って?(笑)


それそれ。住宅街とかには少ないのかな。普段、あまり見かけないような気がする。大きな実がなるどっしりした木だから、街中で植えるには大きすぎるのかな。


たしかに、庭木としては趣味人を除いては例がないかも。イメージどおりあまり都会的ではない雰囲気の木だから、街中に住む人には敬遠されたのかもしれないなぁ。



木曽赤沢のヒノキ林のような、有名な林ってあるの? 京丹波周辺に限らないけど。


山でクリの木ばかりの純林というのは、お目にかからない。いろいろな樹種とまざって成育する、つまり、点々と存在しているのが普通だ。
高さはかなり大きくなるよ。とはいえ、樹高20mを超すまでの大木はあまり見たことはないが。



たしかに、クリばかりの林って想像できない。
樹種としては、それくらいの高さが一般的なの?


いや、太古の昔には、天然の混交林の中で大木も多かったと思われる。でもその一方で、木材としての伐採も進んだのではないかな。
また、食用としての利用も古く、クリの実が好まれるにつれて、農家の周辺に「クリ園」を作って栽培するこということが多くなったから、とも考えられる。



ああ、つまり果樹園だね。


そう。そこではリンゴやモモなどと同じような、実のおいしさを狙って品種改良されるのと同時に、大木よりも枝を張り果実の採りやすい大きさに変化してきたというわけ。


そうやって、丹波栗の名産地になったんだね。


丹波栗の歴史は古いんだ。古事記にさかのぼるんだよ。

え? 古事記!?


そう。「栗」について記載は、古事記のなかの景行天皇の項にあらわれるというが、最も歴史の古い栽培地が丹波地方で、丹波栗の名は大栗の代表とされる。
その後、平安時代に編纂された延喜式には、「昔から丹波のクリは質が良く、大きさは卵くらい。諸国が栽培しても、丹波には到底及ばない」とあるそうだ。


うわぁ、最高級品なんだ! そんな昔から質の良さが認められているのかぁ。人とクリのおつきあいも長いんだね。


平安時代といえば、百人一首で有名な和泉式部がクリの木の下で雨宿りをしたという話が、姫路の書写山というところに伝わるそうだよ。


和泉式部・・・日記の人だ。


そう。その木は、現在の兵庫県相生市若狭野町雨内というところにあったらしい。残念ながら枯れてしまったようだが、枯死したものを村で大切に保存して、それが相生市立歴史民俗資料館に残っているという。
また、この木から移植したというクリの木が、相生市那波の得乗寺(とくじょうじ)にあるそうだよ。樹齢700~800年のシダレクリだ。


シダレクリ? シダレザクラとかと同じ、あのシダレ? 
クリなのにしだれてるって、なんだかイメージが違う。


ん? そこが疑問? クリも種類はいろいろで、そういうものもあるんだよ。
北半球にシナグリ、ヨーロッパグリ、アメリカグリなど、10種ほどあるが、その中でわが国の自生種は「クリ」一種。
ただし、ヤツブサグリ、シダレグリ、ハコグリ、チョウセングリなど変種は多く、タンバグリ(丹波栗)も一変種とみなされている。それらから生まれた栽培用品種は数多い。


そうなんだ~。あ、ねぇ、今更だけど、どんぐりとクリの違いって何? 


どんぐり(団栗)とは、コナラ、アベマキ、ミズナラ、カシワなどのナラ類、アラカシ、シラカシなどのカシ類の果実の俗称で、一つ一つ独立で丸くて、総包というキャップを付けている。
クリは全体イガに包まれその中に複数の実りあり、で様子が違う。ともにブナ科の植物で、親類うちではあるのだが。


ドングリも、食べられるんだよね。


食べる人もあるよ。太平洋戦争中なんかは、食糧事情が悪く、農林省の中の特用林産の課では、食用ドングリを扱っていた。
またそのずっと以前、江戸時代に長崎平戸ではドングリが食用になるマテバシイを植栽して飢饉に備え、ふだんは薪炭林として使っていた。



でもやっぱり、お味ではクリが一番。特にタンバグリが。


そうそう。


木材としてはどうなの? ヒノキなんかとは違って、硬い木ってイメージがあるけど。


そのとおり。クリの幹材は、硬いよ。そして、水濡れに強い。
そういう性質から、縄文時代から建築材として使われてきた。6500年前の福井県鳥浜遺跡でも、4000~5500年前の青森三内円山遺跡でも。
青森三内円山遺跡の掘立柱建物跡では、太さ1mのクリの柱が地中2mの穴を掘って立てられていたと平成6年に判明した。それを復元展示しようとなったとき、クリの大木がわが国では見つからず、ロシアから輸入したとか。


え~!? それはなんとか日本で調達してほしかったなぁ。


そうだね。また、防腐剤が普及するまでは、建物の土台などにも多用されてきた。
そのため、クリの木がどんどん伐り出され、山にはクリが少なくなった一つの原因と見ていいだろう。


線路の枕木にも使っていたんだよね。


お、よく知ってるな。それも硬くて水濡れに強いという性質からだ。
鉄道が敷かれた明治以降、枕木に適材だったんだが・・・。



あ、知ってる。クリの木が減って、山からクリが来ない。
で、枕木はコンクリート製になったんだよね。・・・「来ぬクリ」に。


うわ、残念。じぃじ先生のネタ、知ってたか。


うふふふふ。






こんなに大きいの!? 
こうなると、ペンのサイズに疑問が出てくるんだけど・・・。





京丹波町食のキャラクター「味夢(あじむ)くん」。
体の部分にご注目。
なお、本サイトには、2度目の登場です。





選果場にて、機械の上をごろごろ。
ああ、その音すらおいしそう。





これがクリの白い花。集落のあちこちに見られる。
6月下旬撮影。





実がついた枝。なんとも重たそう。
ポトリと落ちるまで、いま、しばらく。10月末撮影。





信州・小野のシダレグリ(国の天然記念物)。
枝にぽつぽつとイガが見える。





こんにちは。どんぐりファミリーです。
いうまでもありませんが、かぶっているのが総包です。





ほんとだ。枕木がちゃんと「木」だ。
昭和の終わり、廃線になった跡なんだって。
訪ねてるとは、さすが鉄道好きのじぃじ先生。










じぃじ先生 ちょっと教えて 
バックナンバー>>>


じぃじ先生 ちょっと教えて 
バックナンバー>>>

inserted by FC2 system