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2010.11
じぃじ先生 ちょっと教えて
 

COP10が閉幕したね。

 

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COP10閉幕。お城が見守る中、さて成果は・・・。




*1 愛知ターゲット

2010年以降、生物多様性保全のための国際的な努力目標・行動指針。漁業、農林業など20項目にわたり、主には、地球上の陸地の17%・海の10%を保護地域とすること、生物生息地の喪失速度を半減させる(可能な限り、ゼロに近づける)こと、など。





*2 名古屋議定書

天然の生物資源の利用や、その資源や遺伝情報から開発される医薬品などの化学物質がもたらす利益の配分についての国際ルール。開発した国ばかりが利を得るのではなく、その生物や遺伝資源を提供した原産国にも適切に配分することを定める。









木曽・赤沢のヒノキ林にはほんとに感動だった。じぃじ先生がここを好きなの、納得。






その下にはアスナロ。アスナロもきれいなんだよ。でも、赤沢はヒノキの林であってほしいから・・・。









♪ぼくらはみんな生きている 生きているから
・・・考えなきゃいけない。







 

  COP10(生物多様性条約第10回締約国会議)、閉幕したね。
29日が最終日って言ってたのに、30日になってからようやく閉幕のニュースが流れてた。みんな「あ〜、ホッとした」という顔をしていたね。

会議が30日未明にまでずれ込んだんだ。それだけもめたということなんだが・・・。
妥協の産物ではあるものの、「愛知ターゲット(*1)」と「名古屋議定書(*2)」のふたつを何とかものにしたので、まあまあ成功、うーん、60点ぎりぎり合格というところかな。
2009年12月の、地球温暖化防止のCOP15(気候変動枠組条約第15回締約会議)のように、問題を結論なしの「次期持ち越し」にしたのよりは、良かった。

「愛知ターゲット」の保護地域の17%という数字は、先進国が20%、途上国が15%と主張したものの中間だよね? なんだかちょっと安易な感じがするなぁ・・・。

おっと、手厳しいなぁ。
あの数字は、高い目標を掲げたい先進国と、発展阻害にならないよう抑えたい国々との間をとった値のようだね。
「愛知ターゲット」で掲げる数ある努力目標は、いずれも各国のせめぎあいや妥協の結果であって、またその表現もあいまいなものが多そうだ。その中では、保護地域の数字は、まだ具体的といえるかもしれない。


「名古屋議定書」の方は、「生物資源のことで各国が対立してまとまらない」ってニュースで見たよ。

そう。これも事前協議が不調に終わって心配だったが、なんとか日本が出した議長案にもとづいて、採択にこぎつけた。


その「配分」なんだけど・・・。
生物資源を守るために、生物の多様性を保護しましょう、地球環境を守っていきましょう、というのはよくわかるんだ。でも配分は人間同士のこと。人間のごたごたと、生物多様性保護っていう地球環境の問題を混ぜてほしくないなぁ。

うーん、なるほどなぁ。こんな例で考えてみよう。
山村に住むAさんの家の裏には、いいクリの木があってよく実る。これを都会の企業B社が買いにきた。B社は、Aさん同意の下、採集費込みで1kgあたり100円支払った。
ところでB社は、すばらしい加工技術を持ち、これを高級マロングラッセにして売り出した。その商品価格はクリ1kg換算で10,000円、加工賃を差し引いても5,000円の利益が出るという。
これを聞いたAさん、「その利益の半分は私に返してくれるべき」と主張した。

Aさんの気持ち、わかるなぁ。

ここで、Aさんを生物資源を持つ発展途上国、B社を研究や技術が進んでいる先進国と置き換えてみよう。
B社としては、返還率をできるだけ低率におさめて自分の利益を確保したい。だが、Aさんは高率返還を求める。更にそこに歴史的な経緯や感情などがからんで混乱したとういわけ。
この利益配分の問題は、COP10最大の話題だった。
金銭経済の絡んだ人間同士の議論が、科学的生物学的な課題を飛び越してしまったわけだから、違和感を持つのも当然だろうね。


クリにとっては、人間同士の利益の奪い合いなんてことには関心もないよね。それより、自分がすくすく育つことができる環境があるかどうかのほうが大切だ。

あははは、そうかもしれないね。
去年、木曽のヒノキ林に出かけただろう? そこで話したこと、覚えてるかい? あの美しい林が抱える問題のこと。


下から生えてきているアスナロの方が強くて、せっかくのヒノキ林が取って代わられちゃいそうな危機っていうお話?

そう。
人間が欲しいのはヒノキ林の美しい景観とその良材。しかし、アスナロは、ヒノキより成長は悪いが日陰に耐える力は強いため、放置しておくと、ヒノキが負けてしまう。
淘汰だね。だからアスナロ退治の手入れが必要、つまり、バランスをとるために人間が自然の生態系に手を入れる必要もあるわけだ。

え、ちょっと待って。あれ? 生態系とか環境を守るって、人間のためなの?

そう! よく気づいた。それ、大きなカギだよ。
人間は自然を使わせてもらっているのだが、自然を有効に、また使いやすいようにするため、人手を加えることになる。
ならばそのとき、自然の許容力を超えてはならないということは、当然だよね。でも、現実は違うところが問題なんだ。
生物種の絶滅は、恐竜時代には千年に1種、それが現在は1日に100種とのこと。それは、森林や海辺を開発する人間活動によって、生き物のすみかが失われているためで、疑いもない事実だ。


生態系に負担をかけているのは、人間なんだよね・・・。

人間も、他の生物に依存しないと生きていけない動物だからね。しかし、大切な依存する生物を絶やしてしまっては、元も子もない。
生物多様性条約というのがあって、これは、大きく三つの目的を持っている。
@生物多様性の保全、A持続可能な利用、B生物資源の利用と利益の配分、で、これすなわち、多様な生物を、生物だけでなくその生育環境とともに保全しようとすることだ。
生物は人間にとって重要不可欠な資源であり、いつまでも利用し続けられるよう利用する。
そしてその資源利用で生まれる利益は、資源の利用者のみならず、資源の提供者にも分配されるべきもの、ということなんだよ。


だから、利益配分のことがCOP10の大きなテーマのひとつになってたのか。

そう。そして、生物多様性が失われると、「生態系サービス」が満足に受けられなくなってしまうということが大問題なんだ。

「生態系サービス」って?

食料や各種資材といった資源供給、水や大気などの環境調節、風景・快適性などを含む文化的貢献のこと。現在の人間生活が成り立つのに不可欠のものだ。
生物多様性に富んでいるほど、自然からの人間社会への恩恵は大きくなるよね。

そっかぁ・・・。「自然を守りましょう」ってよく使うけど、結局自分たちのためなんだ。自然や環境を保護してあげるという、「上から目線」は大間違いなんだね。

われわれが自然からの恩恵を受け続けていくためには、森林国・日本では森林が大切。
森林を守ることは、二酸化炭素対策になる、水も、水中の生き物も守れる、土も守れる。
だから、日本の場合、生物多様性の保全とは「森林生態系を守ること」。それが本質だと、じぃじ先生は考えているんだよ。


じゃあ、私たちには具体的に何ができるんだろう?
「地球温暖化」の話だと、都市が水につかる、氷がとけてシロクマが困る・・・なんて例を聞いたし、防止のために自分たちにできることが、エコバックを使うとか、節電やゴミ削減をがんばるとか、わかりやすかった。でも、多様性の方は、いまひとつピンとこないんだなぁ。

一言でいえば、環境を今より悪くしないように努力すること。
それともうひとつ。何よりも、ひとりひとりが、意識を持つことが大切だね。自然のこと、環境のこと、生態のこと・・・人間社会を取り巻くいろいろな問題に。

それなら私にもできそう。
環境のことを学んで、悪くしないように意識して行動する・・・。それって、つまり、温暖化防止と同じことだよね。地球温暖化防止と生物多様性保護の両方に役立つなんて、一石二鳥だね。


 

 

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