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2017.10
じぃじ先生 ちょっと教えて

コアラはユーカリの葉を食べるんだよね。



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海が近いからか、道端にカモメがいっぱいいる。
8月のメルボルンは真冬。カモメも寒そう。




シドニーの動物園にて。なんと40年前の写真!
大きなユーカリだなぁ。寝ているコアラも気持ちよさそう。




こっちは2011年、同じシドニーの動物園にいたコアラ。また寝てる・・・。




シドニーの王立植物園にあるユーカリの木。白い花が咲くって、知ってた?






京都府立植物園にもユーカリはある。
これは、ツキヌキユーカリっていう種類。コアラは食べるのかな。




メルボルン郊外にあるヒールズビル自然保護区では、太い木に樹齢の札が巻いてある。
このユーカリは樹齢250年以上。




同じく、ヒールズビル自然保護区の動物園にいたコアラ。また寝てる・・・。




コアラの展示エリアには、木みたいなオブジェがあって、登って遊べる。
コアラが普段暮らしているところは、こんな感じなのかなぁ。人間も、やっぱり寝てる・・・?




ヒールズビルの動物園の中には、アボリジニの伝説の解説版がいたるところに。
このあたりにも、住んでいた部族がいたんだよね。




メルボルンに行ってきたよ。

オーストラリアか。もう40年ばかり前、調査でフィジー諸島へ行った時、キャンベラとシドニーにちょっと立ち寄ったくらいだなぁ。


え? じゃあ、オーストラリアの街や自然をしっかり見ていないの? 
もったいない! じぃじ先生の研究に関係のありそうな場所、いっぱいあるのに。

まったく、ね。で、どんなところへ行ってきたのかな。


いろいろ行ったけど、創立150年という古い動物園や、広大な自然保護区のなかの動物園がすごくよかった。

ほう。オーストラリアには不思議な動物がたくさんいるからなぁ。
カモノハシとかウオンバットとか、カンガルーとか。なかでも代表選手はやはりコアラかな。


うんうん。小さい頃から動物園で何度も見ているから珍しさはないんだけど、やっぱりかわいかったぁ♪

きっと知っていると思うけど、敢えて聞いてみよう。コアラの主食は何でしょう。


ユーカリの葉っぱでしょ。葉には毒があるけど、コアラはそれを解毒できる消化器官を持っているって聞いたよ。

おっと、毒性の話か。おもしろいことを知っているなぁ。
毒というものは、使い方によっては逆に医療面で有効な成分となる可能性が高い。ユーカリもその例で、ユーカリ油は、痰、けいれん、局所充血を取り除くとして、薬品などに使われているよ。虫除けにも効果があるらしい。


そういえば、のど飴の袋で見たような気がする・・・。

そのユーカリの原産地は、オーストラリアの南にあるタスマニア島。現地には樹高100mを超す大木があるというよ。
オーストラリアの国花で、19世紀のはじめにヨーロッパ・アメリカに導入、アメリカでかなり大造林されたそうだ。


欧米にもあるんだ。ユーカリって、オーストラリアならではの木ってイメージなんだけど。でも、日本の気候風土では育ちにくいのかな。そんなに見かけないよね。

いやいや、実は日本でもおなじみだった。むしろ、積極的に植えられてきた樹種だよ。


え? ユーカリ並木で有名な・・・とか、聞いたことないよ?

まぁ、最近減っているのは否めないが、基本的にシイやカシに適したような場所なら、ちゃんと育つんだ。最初に入ってきたのは1875(明治8)年という記録がある。


外来種を取り入れるには、何か意図があったのかな。

目的は、ずばり「短伐期林業」と「急速緑化」。太平洋戦争後、昭和20年代から40年代にかけ、西日本各地で盛んに植えられた。
同じくオーストラリア原産のアカシアとともに、早生樹であることから、重宝されたんだよ。


早生樹? 

文字通り、早く育つんだ。学名はEucalyptus で、eu (よく)+kalyptos(被る)の意味。つまり、地表をしっかり覆うという成長の特徴から名がついているほど。それに乾燥しがちな荒地でも、ある程度の生育が期待できた。


えーと、早くというのはどれくらいのスピードのことを言うんだろう。

ユーカリは10年ぐらいで材木として使える大きさになる。他方、たとえばスギやヒノキなんかは、通常10年くらいでは材木にならない。
パルプ用材にユーカリの大造林を進めたブラジルでは、7年サイクルで伐採するそうだよ。


成長が早ければ、緑化も早く進むってことだね。ユーカリは成長するためのエネルギーの効率が良いってことなのかな。

ごくごく単純な話だ。他の木に比べて、光合成量が多いということだよ。それともうひとつ特徴を言えば、水分が多い。


・・・ということは、重い?

これは、いいところに気がついた。そう、ユーカリやアカシアは重い。だから、それらの生木は水に浮かずに、沈むんだ。
収穫材を水上輸送しようと港で海に放り込んだら沈んでしまい、慌てたという話、聞いた時にはびっくりしたなぁ。


生木が沈むって衝撃! 水分が多いなら、建築材には適さないんじゃない? 
ユーカリ材の建物とか家具とか、見たことがないような気がするもの。

オーストラリアの現地には多いんじゃないかな。何しろ森の木の4分の3はユーカリという国だから。日本の場合はきっと、ユーカリが向いていないというより、他に向いている樹種がたくさんあるということだろう。


なるほど。それも今、あまり見ないように感じる理由のひとつなのかも。急速に成長することで緑化という目的がある程度果たされた。その時点で、さらに増やそう、商業ベースに乗せようという動きにならなかったとか。

そうだね。直接お金になる木材としての価値が、一般に認められなかったからかもしれない。


とはいっても、当時早生樹として盛んに植えたわりには、やっぱり少なすぎない? 
今、コアラを飼育している日本の動物園では、ユーカリの確保に苦労しているみたいだよ。

もともと日本にはなかった樹種なだけに、いろいろと苦労も多いだろうね。
ユーカリには500種(変種も含めれば1,000種)以上の種類があるけど、そのうち、コアラが食べる種類は限られているようだ。


500種! そんなにあるの!? 天王寺動物園(大阪)のサイトに、コアラが食べるユーカリは約40種類ってあって、それでもびっくりしていたんだけど。
コアラの好みの味・・・そういえば、新鮮で好きなにおい(テルペン類)のする葉っぱしか食べないっていう論文を読んだことがある。
偏食家の上にグルメとは、餌の調達がますます大変だ。

日本で最初にコアラがやってきた名古屋の東山動物園では、園内と近所の山でコアラに与えるユーカリを自家栽培しているよ。


東山動物園は、小さいときにばぁばによく連れて行ってもらったよ。子どもをお腹にいれたコアラが、ぴょーん! と木から木に飛び移って、もう拍手喝采だった。
でも、活発だったコアラを見たのってその時だけ。その後もあちこちで見たけど、いつも寝ていたなぁ。

コアラは、一日のほとんどを寝て過ごすというじゃないか。


そう。ユーカリの葉にはあまり栄養がないので、お腹が減らないように動かないんだって。省エネ運転なんだよ。水もあんまり飲まないらしい。

水を飲まない? どうしてだろう。


アボリジニのある部族にね、コアラは昔、水を飲ませてもらえなかった少年だったという言い伝えがあるんだって。

アボリジニはオーストラリアの先住民族だね。コアラが少年だったって、どういうこと?


昔、村でいじめられて水をもらえなかった少年がいたんだけど、村中が留守のある日、水を盗んだの。そして近くにあった木に登って特別な歌を歌ったら木がするする伸びて、彼を隠した。
帰ってきた村人たちは当然怒って、少年を高い木からひきずり降ろそうとした。でも、そうするうち彼は落ちて亡くなってしまった。それを哀れに思った精霊がコアラに変えたというお話。

哀しいお話だなぁ。で、なんだって? 木がするすると伸びた? 
ほぅ、さすが成長の早いユーカリの木だな。


え? あ!

水を飲ませてもらえなかった少年がユーカリの木に登ったというのも暗示的だね。


そうだ、ユーカリの木は水分が多いんだ!
すごいなあ、木の性質とか特徴が的確にとらえられている。言い伝えにはちゃんと理由があるんだね。


 

     


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