ブログでハスの話題読んだよ。冬のやれはす(敗荷、破れ蓮)からは、想像できないくらい美しい姿になっているね(→2022.5.31ひとりごと)。
そうだな。ハスは梅雨の頃から梅雨明けにかけてが、花のシーズンだ。 写真をよく見てごらん。花の土台にあたる部分、蜂の巣に似ているだろう? 「蜂巣」、それが転じて「ハス」と呼ばれるようになったというのが、名前の由来として通説のようだ。
そもそも、日本の植物なの?
いや、日本にあるハスの多くは、東南アジアやオーストラリアが原産だと言われているよ。
ベトナムの国花ってハスなんだよ。ベトナム航空のマークでもあるし、植物そのものもモチーフとしてもよく使われる。食材としてもおなじみ。根っこのところだけでなく、花も実も葉っぱもね。ハス茶も大好き。
ほう、余すところなく使われるというわけだな。ただ、「根っこ」というのはどこだろう。
穴の開いたところ、レンコンのことに決まってるじゃない。炊いたり焼いたり、お酢で漬けたり・・・アレだよぉ。
お、想像通りの反応(笑)。実はあれ、「根っこ」じゃないんだよ。
え!? 読んで字の如し。ハスの根っこ=蓮根(レンコン)なんじゃないの?
まあ、そう思いがちなんだが、食べているあの部分は地下茎と呼ぶ部位なんだ。
あははは、「伸ばしまくっている」か。それそれ。
でも、レンコンのこと「根菜」って言うじゃない。
それはあくまで野菜の分類上の区分(根菜類=土の中で成長する根や茎で食用とするもの)においてのこと。植物学的には地下茎だよ。 ジャガイモも根菜だが、地下茎だ。一方で、サツマイモとゴボウの食べる部分は根っこだよ。
私たち、地下茎を食べていたのか。地下茎と根っこの違いってなんだろう。
ん? そんなに疑問かな。 根の働きは地中から水分や養分を吸収することだろう? じゃあ、茎の働きは?
吸収した水分や養分の通り道。葉に届けるためのもの。
そう、茎には水分や養分を送り、花を咲かせる、実をならせるといった働きがあるね。多くは地上で成長するが、一部に地中で成長していくものがあって、それを地下茎と呼ぶ。 要は、茎が地中にもぐっているというだけ。地中にこそあるけれど、あくまで茎としての役目を果たしているものなんだ。
じゃあ、ハスにも根っこは・・・。
あるさ、当然。節の部分からちょろちょろっと生えているヒゲみたいなものを見たことないか? あれがハスの根だ。
そうなんだ。レンコンの認識、改めなきゃ。
そういえば、「ハス」と「レンコン」という言葉の使い分けについて、NHK文化研究所が行った調査(2005年9月、2,075人回答)の記事を読んだことがある。 植物そのものをハス、食べる部分をレンコンと、それぞれ呼ぶのが一般的と思わないかい? あ、ベトナムではなく日本での話だよ。
うん、わかってるよ。
それが、その調査によると、地下茎についても「ハス」と呼ぶという回答が多くあり、とくに東京・関東・甲信越では日常的に使われているという結果だったそうだ。
あぁ、「ハスのサラダ」とかね。お店のメニューなんかで見る。
ん? そこに違和感はないの? じぃじ先生は調査結果にちょっと驚いたんだが。
私自身は「レンコン」って言うけど、別に違和感はないよ。地域差なら、関東住まいが結構長いからかなぁ。
あ、ねぇ、スイレンってあるじゃない? ハスとスイレンの違いも、地域差?
いや、待て待て。ハスとスイレンは異なるものだよ。分類の「目」からして違う。
そもそも見てはっきりわかる違いがあるじゃないか。葉に対して花の茎がスッと高く伸びているのがハスだ。一方、モネの名画『睡蓮』はどうだろう。
あ、花も葉も水面のすぐ上にある! 水面との距離が近くて浮かんでいるような感じ。そうか、似ているけれど違うものなんだ。 京都府立植物園の「やれはす」は、ハスなんだよね。
そう、「巨椋(おぐら)の曙」という特殊な品種。 開花初日は桃紅色、2日目以降は白色に変化するそうだよ(→2022.5.31ひとりごと)。
それ、すごく不思議だったの。だけどなぜか、ハスの話ならば「さもありなん」って感じもするんだよね。 ハスって何か独特で・・・やっぱり仏教のイメージがあるからかな。
わかる。そう、その印象は強い。極楽浄土にはハスが咲き誇っていると聞くし、仏像が座るのもハスがモチーフの蓮華座だ。
うん、それとね。ちょっと調べてみたら、いろいろ面白いエピソードが出てきたんだ。
千葉の大賀ハス。縄文時代の種子が1951(昭和26)年に発掘されて栽培したところ、翌年に開花。ハスの研究者・大賀一郎博士が自宅で発芽させたとか。
岩手・平泉の中尊寺ハスは、1950(昭和25)年の中尊寺金色堂の発掘調査で発見された藤原泰衡の首桶に入っていた種子から。1998(平成10)年、約800年ぶりに大賀博士の門弟が開花させたそうだよ。
大賀博士はハス研究の大家だね。お名前はじぃじ先生も知っているよ。 しかし、縄文時代に、泰衡といえば奥州藤原氏の最後の当主だから鎌倉時代か。その頃の種子が発芽したとは、すごい話だな。
もっと驚くのが、埼玉県行田市の古代ハス。なんと1973(昭和48)年、公共施設建設工事のときに偶然できた水たまりのなかで、地層の中で眠っていた種子が自然発芽して開花したんだって。1400年〜3000年前のものと見られているそうだよ。
自然発芽とは、またとんでもない!
ドラマチックだよね。途絶えかけていたハスがよみがえるなんて。
ハスには、そういう奇跡や逸話、何より歴史というか長い時の流れがふさわしいと、つくづく思うよ。
その生育地はたいてい泥炭地。そこにあれだけ清らかな雰囲気の花が咲く。その様子は、「蓮は泥より出でて泥に染まらず」という中国の成句としても伝わる。そうしたギャップもまた特別感を醸し出す要因かもしれないね。
花の見頃も雨の多い、うっとうしい季節だもんね。大賀ハス、見に行ってみようかな。
ハスの花の命は短くて通常4日ほど。それも、早朝から開花して午前中には閉じてしまう。
うーん、朝寝坊の私にはハードルが高い…。
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