東京タワーも招致を応援。去年はこんな感じに点ったこともあったんだって。
長野オリンピックのマスコット、スノーレッツ。と、愛・地球博のモリゾーとキッコロ。なつかしい〜。
志賀高原の岩菅山。標高2295m。幻の五輪会場・・・。
アルペンスキーのコースが計画されていたのは、この斜面。「オリンピックのための森林伐採反対」の声はかなり強かったみたい。(撮影1989年)
白馬八方尾根に前からあったコースを、オリンピック用に改修。写真はその工事前の様子。
愛・地球博より前の、海上の森の様子。この中にオオタカとモリゾーとキッコロが・・・?
1998年の反対運動は、こんな感じだったみたい。木に札をぶら下げて、立木トラストで抵抗。
海上の森には、ちょっと珍しいモンゴリナラの林もあるんだね。
万博のあとも、海上の森が残ってる。
ちゃんと調査をして、対策をしたから、残せたんだよね。
野鳥がいっぱいいるらしい、葛西臨海公園。
この写真奥が、カヌー競技の予定区域。
昭和初期の名建築、東京国立博物館。この風格も、上野公園の緑あってこそだね。
日本橋の今。新しいものと古いものが混ざってて、これはこれで好きだけど・・・。
| 2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まって、いろんな施設ができるみたい。
大きな開発が行われるとなると、環境破壊が心配になるなぁ。
そうだね。大きいものをつくるとなると、当然環境への影響が大きい。
だから、しっかり調査をして、きちっとした計画を立てないと。
その調査ってどんなものなの?
その予定地が今、どんな環境かを調べるんだ。そして、開発されたらどんな影響があるのか、という予測を立て、評価する。
それを「環境アセスメント(環境影響評価)」という。
assessment、人や物を評価、判断するという意味だね。
そう。もとは財産評価のことだったらしいけどね。
具体的な調査ポイントとしては、環境汚染と地形・地質、植物・動物および生態系、景観・触れ合いの状況、廃棄物のことなど。
予定地におけるこれらの項目について、予測、評価する。そして、悪影響がないように、開発計画を設定するというものだ。
■環境省 環境影響評価情報支援ネットワーク
うわぁ、たくさんあるんだねぇ。
1997(平成9)年に法整備され、その義務は、国、自治体、企業など開発する側にある。アセスメントを専門に請け負う会社もあるんだよ。
開発の方針を左右する調査なんて、責任重大だ。
そうだね。じぃじ先生の専門関連だと、植物や動物の生態あたり。
まずは、そのリストアップ、次に、開発が実行された場合、それがその地にどう影響するのかをシミュレーションする。
わかりやすい例としては、大きな建物が建った場合の日蔭や風の通り道の変化観察などかな。
ねぇ、たとえば調査で、その場所で絶滅が心配されるような動物が見つかったら・・・?
そのケースは大問題だよ。
開発計画というのは、開発してもその土地の環境に大きな影響はない、動植物の希少種はいないだろうというのが前提。
それをふまえてこそのものだ。だから、そこで何かが発見されたとなると・・・。
計画はストップってことかな。
いやいや、話はそう単純にはいかないさ。今度は、見つかった動植物にとって開発がどういう影響を与えるかを検討する。
たとえば、ある希少動物が住めなくなるとしよう。その場合の代替地が近隣にあるかどうかを考える。
代替地って、その動物が引っ越すというか、逃げる先っていうこと?
まあそうだね。その動物の住処を確保しないといけない。
より細かな調査が、環境に悪影響を与える事態が起こらないよう計画を修正していくために、必要だというわけ。
う〜ん・・・なんか、開発計画ありき、なんだね。
お、なんだかご不満ですな(笑)。
もちろん計画の大幅変更や中止もないわけじゃないよ。じぃじ先生が関わった話をしようか。
まずは、1998年の長野冬季オリンピック。このときは、志賀高原の岩菅(いわすげ)山というところにアルペンスキーのコース新設が計画された。
長距離を滑り降りる競技。コースって、結構な規模だよねぇ。
標高差800m、コース終点に200mの平地が必要だと国際規格で決まっている。
その計画が発表されるや、世論は「原生林伐採反対」の大合唱さ。
まあ、実際にはここは人の手が入っていない「原生林」ではなく、かつて伐採が行われたあとに再生した二次林だったんだが・・・。
じぃじ先生、「原生林」か「二次林」かなんて、一般人には見分けがつかないよぉ。
木が生い茂った山は、みんな「原生林」って思っちゃう。
そうなんだなあ。
じぃじ先生たちは現地に何度も出向いていろいろな調査をし、委員会での議論を重ねた。そして、いよいよ報告書のまとめをしているとき・・・なんと! やはり既存のスキー場で何とかしようと方針が変換されたんだ。
ええ? そのタイミングで!? もう最終段階じゃない!
高まる反対世論を押し切るべきではないという、トップの英断だったね。
で、志賀高原はやめて、白馬にもともとあったスキー場を国際規格に改修してオリンピックコースにしたんだよ。
長野オリンピック、連れて行ってくれたよね。そんな大変なことが裏であったなんて!
そういえば、愛・地球博(2005年)でも計画の変更があったよね(→2011.1ちょっと教えて)。
そのとおり。名古屋市近郊の海上(かいしょ)の森という場所だが、あそこは、もともと大規模な宅地開発の計画があったところなんだ。
大々的に造成が行われる予定の土地を、その開発前に半年だけ万博に借りようという話だったんだよ。
しかし、それが一般の人々には「“万博のため”の里山の乱開発」と映ったんだな。ここでも大反対が起こったんだ。
その里山って、オオタカの巣が見つかったんじゃなかったっけ?
お、よく覚えているな。
もともとあの地にはシデコブシという希少植物やモンゴリナラという珍しい木の林もあった。だから開発時には要注意、ということになっていたんだが、その環境調査報告が出て2ヵ月後に発見されたんだよ、オオタカの営巣が。
オオタカは、環境省が国内希少野生動植物種に指定しているらしいね。
そう。そんなものが住んでいる場となれば、開発はできない。結局それが切り札になって万博会場は、すでに開発されていた近くの青少年公園につくることに変更になった。
そして、海上の森は一部だけが万博会場となって大半は保存。メイン会場との間をロープウェイで結ぶことで結着したんだ。
あっ、それ、乗ったよ。途中で窓が白く曇るの!
ああ、そうだった。あれはロープウェイで飛び越すところにあった住宅地に住んでいる人たちへの配慮の策だね。
・・・とまぁ、こんな経緯から、結局は当初あった大規模な宅地開発計画自体もなくなったんだよ。
そうか、そうやってモリゾーたちが住む海上の森は守られたんだ。
今度の東京オリンピックではどうなるんだろう?
まぁ、もとが街だから長野や名古屋の例とはちょっと事情が違うだろうね。
うん。でも、東京の街中って緑はただでさえ少ないわけで、これ以上減らさないでって思っちゃう。なんか息苦しくなりそうな感じがして。
「息苦しい」とはおもしろい表現だ。
では質問をひとつ。東京都民の呼吸をまかなう酸素を供給するにはどれくらいの森林が必要か、知ってるかい?
そんなの、全然、見当もつかないよぅ。
よく言われるのは、関東7県全部の森林が必要ということだ。
だがまぁ、実際のところは、空気は動いているから東京で息がしにくいなんていう事態にはならないさ。安心しなさい(笑)。
もっとも、皇居や明治神宮の森を伐採するというなら大問題だけどね。
さすがにそれはないでしょ。でも、葛西の森はどうなのかな?
葛西の森?
葛西臨海公園。今、緑地になっているんだけど、その一部をカヌー会場にする計画があるらしいんだ。
もとは埋立地だったのが、25年をかけて今の姿になったというところで、野鳥の楽園もそばにあるの。それを、わずか数日の競技のために壊すのはいかがなものか、と、反対運動が起こっているんだって。
東京都も見直しを検討しているらしいよ。
ほぉ、そんな話があるのか。その緑地、市民にとっても憩いの場であるはずなんだがなぁ。
うん。やみくもに自然破壊!って騒ぐつもりはないよ? 開発も必要なことだから。
でも、開発されてきた場所だからこそ、緑が一層大事なんじゃないかなって思うの。
都市部やその近郊の大規模開発に必要なのは、さまざまな視点からの検討だ。環境への配慮と言っても、希少動植物の保護だけではない、景観などもきちんと考えるべき。
なぜなら、都市は人間が暮らしているところだろう? だから歴史的な建造物がたくさんある。
都市的な景観は、それらと緑地や公園とが相まってこそ、つくり出されるものなのだから。
1964年の東京オリンピックはプラス面は大きかったけど、一方で、日本橋の上に高速道路を通して、歴史的な景観を壊してしまったというようなマイナス面もあったんだよね。
今度も、建て替えになる国立競技場について、予定のデザインが神宮外苑の景観を損ねるっていう声が広くあがっているみたい。
2020年まであと6年。環境アセスメントっていう視点から、世の中や街の動きを注意して見ているようにしようっと。
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