いくら大きくても、コレは森林でない。
高知・杉(←これは地名)の大杉。
大小の木々で“モリ上がる”。
高知・魚梁瀬(やなせ)の千本山スギ天然林
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「森林」。あたりまえに使っている、誰でも使う言葉ですが、改まって「森林とは何か?」と問われるとちょっと困りませんか。
その定義は、人によってさまざま。でもまさか、どんなに立派な巨木であっても、1本の木では「森林」とはいえませんね。
・・・で、私は「森林の定義」として、次の3項目を満足させるもの、としています。
1.高木の集団として構成されていること。
高木とは「背の高い(高くなれる)木」のことで、その高さの目安は5m程度。加えて、幹と枝の区別がつきやすいこと、すなわち、はっきりとした幹が発達する樹種であること。
2.その高木が群をなし、ある程度の面積的広がりを持つこと。
それが何u、何ha以上でなければならない、といった決まりはありません。小さくても「鎮守の森」なのです。
3.葉の茂る時期には、「閉鎖」していること。
閉鎖とは、それの占める土地が葉ですっかり覆われた状態。それは空から見て土が見えないこと、すなわち鬱閉(うっぺい)。この概念は大切です。
いかに大面積に広がっていても、ツツジの植え込みは森林ではありません。高木でないからです。
同様の理由で、高山のハイマツ群落も、ハイマツ林とは呼ばれますが、森林にあらず。それより標高が低いところの亜高山帯のシラビソなどの針葉樹林までが「森林」で、それとハイマツ群落との境界のことを「森林限界」と呼ぶのは、その証拠です。
また、いかに立派な巨木の並木(例えば、日光の杉並木、北海道大学のポプラ並木)であっても、それは森林ではありません。それは「線的」であって、「面的な広がり」がないからです。
「森」と「林」はどう違うか、ということもよく話題になります。
一般に、「森」はうっそうとした、大小の木の混じった天然林のような感じ、「林」はちょっと明るく高さの揃った人工林や里山のようなイメージでしょうか。言葉としては、特に区別せず使われていることが多いようです。
大小の木々で「モリ上がって見える」のが森、「人が生やした(ハヤシた)」のが林・・・なんてシャレもありますが、天然林、人工林、広葉樹林、針葉樹林、保護林といったように熟語・専門用語として使われる場合は「林」です。
ちなみに、漢字の源の中国では「森」は「深い」という意味なのだとか。
ちょっと注釈。
「森林」は、専門用語としては樹木だけでなく、その土壌のことも合わせて意味します。
・・・と、ここで思い出すのが「杜」。
木偏に土、というこの字は、森林という「生態系」を意味しているよう。うまくできていると思いませんか。
(c)只木良也 2010
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