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2011.01
森林雑学ゼミ
 

COP16閉幕、結論は先送りだが・・・

 

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国立京都国際会館。1997年12月11日、COP3 京都議定書はここで生まれた。







国際条約の締約国による会議、すなわちCOP。
環境、自然、生命、生活、地球・・・
あらゆることを考える場。


 

 

 

 

 

 2010年10月の名古屋COP10(生物多様性条約第10回締約国会議)に引き続き、12月、メキシコのカンクンで、COP16(気候変動枠組み条約第16回締約国会議)が行われました。
 長期目標として温度上昇を2度以内に抑えること、資金援助の新制度設立や途上国の削減行動の検証法などを決定し、森林の保全による温室効果ガスの排出削減への取り組みについての議論もありました。
 開発にともなう森林の減少を防ぐのに加え、森林保全や持続可能な森林経営による排出ガス吸収の考え方。わが国ではすでに実施されているものと同一路線です。

 そのなか、最大の焦点は、COP15(2009年コペンハーゲン)が「次期持ち越し」にした、先進諸国と途上国との間の利害関係に絡む問題をどうするか、ということ。
 1997年のCOP3による「京都議定書」は、2012年にその制定期間が終了します。その後をどうするか。その話し合いがまとまらなければ、2013年以降に国際的な地球温暖化対策の法的枠組みが存在しない「空白期間」が生じるのです。

 そこで急浮上したのが「京都議定書延長論」。しかし今回のCOP16において、日本は、それに猛反対したのでした。
 日本が議長国として努力し成立させた誇るべき「京都議定書」、その期間延長に反対? 多くの人が感じた疑問でした。

 実は京都議定書で、削減義務を負うのは、全世界で38の先進国・地域のみで、議定書から脱退したアメリカや、いまや温暖化ガス排出量世界一の中国を含む途上国は含まれていません。
 京都議定書制定のとき、温暖化ガスを歴史的に大量排出してきた責任から先進国のみがまず削減義務を負ったものの、その後、「途上国に削減義務なし」を不満として、アメリカが離脱しました。その結果、義務国の合計排出量は世界の27%しかなく、その一方で、排出量合計すれば全世界の4割以上になるアメリカと中国が義務国でないという現状があります。
 このままの京都議定書では、「温暖化対策の解決にならない。すべての主要国が参加すべきだ」というのが、単なる期間延長に反対した理由なのでした。

 京都議定書期間延長問題の結論は、2011年南アフリカで開催するCOP17以降に先送りはされましたが、先進国にこれまで同様、削減義務を課す一方で、途上国には自主的な削減を求めるという、新たな枠組みの構築を目指すことで合意に至りました。これは、根本的解決にはならないとはいえ、現状では精一杯といったところでしょう。
 日本国自体は、「2020年までに1990年比で25%削減」という高い削減目標を掲げています。その達成のためには相当な努力が必要です。
金銭経済的利益が優先する現実の中で、実行可能なのでしようか。

 温暖化対策は、先進国、途上国の間の「不公平感」との闘いです。
不公平感を生んでいるのは、金銭経済支配の社会構造だと思うのですが、まだまだエコノミー兄貴の力は強く、エコロジー弟やきもきの時代です。


(c)只木良也 2011

 

 

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