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2016.08
森林雑学ゼミ
 

「荒い間伐」への懸念

 

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間伐手遅れ林。

幹は細長化し、下層植生が乏しい。

 

 

 

 

間伐手遅れ林。

幹の細長化が進んだ林で雪折れ被害。

 

 

 

 

適切に間伐された林。宮崎県高千穂町





 

 近年、「森林資源の若返り論」が急浮上しています。
 これは短伐期路線、つまり、人工林の木々が50年生程度に達したらすべて伐採(皆伐)して収穫することを基本とするものです。

 これまで、わが国では、人工林の長伐期(間伐を繰り返しながら少なくとも数十年育てる)路線を目標にしてきました。ですから、これは大きく路線を転換ということになります。となれば、短伐期化が大面積の皆伐へとつながることへの懸念は言うまでもありません。
 しかしもうひとつ、ここから大きな心配が生じてきています。

 当サイトでもおなじみの「間伐」とは、人工林の成長に伴って、込み過ぎた林の立木の一部を抜き伐る、すなわち間引きの伐採のこと。
 これが行き届かないと、森林は、幹が細長の“もやし状”の木々の集団に。風雪に弱く、また森林の水源涵養や防災の能力も低下してしまいます(→2010.82012.6森林雑学ゼミ)。
 拡大造林による人工林の蓄積量は増加しています。しかし、森林の保全に不可欠のこの間伐作業の不足のために、過密で脆弱な構造の森林も全国で増えています。その対策として生まれたのが、間伐の実行・作業を補助対象とする「間伐補助金制度」でした。
 ところが、この制度が変更になり、平成25年より間伐材の利用・木材自給率アップを背景にした「搬出間伐材量」重視の制度となったのです。

 本来、間伐とは、その林の将来価値を高めることを目的に、伐り残した形質の良い木がよく成長し、気象災害に対しても強くなるように、また、その地が、下層植生が豊かで土壌の保全にも効果ある林となるように行われる作業です。
 そのために重要なのが「間伐木の選木」。どの木を間引き、どの木を残すのかの選定です。これまでは、木1本ごとにその質を見極めながら伐採していく(定性的間伐)ことを、作業の基本としてきました。

 助成対象が変更されたら、間伐材の搬出量を重視するあまり、この選木の工程を軽視し、目先の搬出間伐にのみ力を注ぐことにはならないでしょうか。それを強度間伐、通称「荒い間伐」と言います。
 搬出材量重視の間伐は、本来なら残して育てるべき良質の木を、高値がつくからと先行・過剰伐採し、またせっかく残した木を損傷させるような乱暴な伐採につながりかねません。そして、その行きつく先は「森林が荒れる」という結果です。
 これでは本末転倒。間伐は、林を保全し、林分の将来価値をつくるための作業。決して、その材による収入を主たる目的とするものではないのです。

 この「若返り論」および「強度間伐(荒い間伐)」については、私が会長を務める国民森林会議(林野行政に対して意見・提言する団体)でも大きく扱い、今年6月1日、27年度まとめの提言書「近年の間伐のあり方について」を、今井敏林野庁長官に提出しました。
 これら2つの問題はルーツを同じくするものであり、「若返り」政策が、短伐期大面積皆伐につながる危険性は大きいと考えます。
 昭和40年代に林業界、とくに国有林に浴びせられた「大面積皆伐非難」の声を、私たちはもう聞きたくない。今、そう強く思っています。



(c)只木良也 2016

 

 

   



 

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