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2011.02
じぃじ先生 ちょっと教えて
 

今年は「国際森林年」なんだって。

 

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さて、森へ出かけましょうか。
(東京・桧原村「都民の森」)





ハイキング。歩いて歩いて・・・。
(山形・真室川付近)





こんな巨木に出会いました。
(京都・芦生)





静かで厳か。なんだか背筋がピシッと。
(長野・木曽赤沢)





森は街にも。何かのついでにちょっと寄り道も◎。
(東京・明治神宮)





注意をひとつ。無理せず、休憩することも大切です。
(「都民の森」)






森林雑学研究室オリジナル、国際森林年ロゴ。

 

 

 

 

  去年は「生物多様性年」、今年は「国際森林年」なんだってね。
前にもあったような気がするって、お母さんが言ってた。

そう、1985年に、FAO(国際連合食糧農業機関)の呼びかけによって実施されたことがある。

1985年、生まれてないや。どんな年だったんだろう?

筑波で大々的な科学万博が開かれた年、日航ジャンボ機の墜落事故が起きた年だよ。
あの年、日本が国内テーマとして設けたのは「君の未来・緑の地球」。そのもとに、全国で森づくりや緑化行事が盛んに進められた。
国としては、林野庁が東京高尾山の国有林で「国際森林年記念の森」の整備を始め、各自治体もそれぞれに、樹木を植栽して「森林づくり」をすることに励んだんだ。

なんだか木を植えるイベントばかりだね。
どうして保護じゃないの? 当時、そんなに日本は木がなかったのかな。
でも、じぃじ先生、いつも「木を植えればいいってもんじゃない」とも言ってるよね。

確かにそうだ。ただ、1985年といえば、高度経済成長期の“やりすぎ”、つまり効率や利便性ばかりを求めて開発一途だった社会が反省期に入った頃。
荒らした自然を回復させるために木を植える、ということは誰でも思いつく具体策だし、それに反対する理由もない。
決して誤りではなかったんだよ。

そのあとは? 植えた木はちゃんと管理されてるの? 

イベントとしての植栽地は、面積的にはそんなに広くないし、その後の手入れもまずまず可能だったと思うよ。
問題は、国の方針として林業用に大造林されたスギ、ヒノキ、カラマツなどの人工林だ。これの手入れが行き届かず今大きな問題になっている。よく聞く「間伐手遅れ林」がそれ。
だから今回の森林年では森林の持続の問題の方を重視している、といっていいだろう。


当時の反省が生きてるってことかな・・・。

そう言えるだろうね。
1985年に行われたことの効果は、もちろんあったんだよ。1980年代、世界の森林減少の速度は、年間1,540万haであったが、20世紀末には830万haと、半減したというデータがある。
しかしながら、そのこと自体はそれなりに評価できるとしても、現実として1990〜2010年に減少した森林面積は、なお日本の国土の約4倍の広さに相当するという。

森林が減ったら・・・。

そう、地球環境が大きく変化するよね。
ということは、我々の生活にも影響するということ。事態は深刻だ。この点、森林雑学ゼミで説明するとしよう。


前の国際森林年から25年間、そんな大きな問題を放っておいたの ?

おっと、手厳しいなぁ。もちろん、放っておいたわけではないよ。
森林がなくなることへの心配は、この25年間に、国際的にもいろいろ取り上げられてきた。
1992年には、ブラジルで国際連合環境開発会議(地球サミット)が開かれ「森林に関する原則声明」を採択。森林の評価、国際協力、市民参加などに関する初めての世界的な合意から生まれたふたつのCOP、覚えているかな。


京都議定書の「気候変動枠組み条約締約国会議」と、去年名古屋で開かれた「生物多様性条約締結国会議」だよね。

そう。その流れで、今回の「国際森林年」も決まったんだよ。
前回呼びかけたFAOは国連のひとつの専門機関にすぎないが、今回は国連総会、つまり総本山での決定だ。25年の間に、「国際森林年」の重要度が増したといえるだろうね。


じぃじ先生はよく「日本は森林国」って言ってるじゃない? それに、SATOYAMAは、国際的に自然との共存のキーワードになってるよね。
そんな日本でも、やっぱり心配なの?

そうなんだよなぁ。日本国内でも環境問題は深刻なんだ。
2005年の愛知万博のテーマは「自然の叡智」だったし、日常生活のレベルでも、森林の大切さが多くの人に知られ、保全の取り組みも広がったように見える。
しかし、日本の木材自給率を見てみると、実は20〜30%前後なんだよ。

え? そんな程度なの? なんか意外・・・。

うん。これは日本が輸入材を大量に使い、結果として国内の森林資源の量は倍増したが、それをうまく使う体制が不備ということによるもの。
結果、国内の山村はどんどん力を失っていってるんだ。


大変じゃない!? なんとかしなきゃ。

そのとおり。森林を維持管理するのに必要なのは森林のある山村の力で、その活性化に必要なのは、地元産業の元気だ。
日本は今年、この山村問題に積極的に取り組もうとしている。昨年末に対策としてまとまった「森林林業再生プラン」をスタートさせるんだ(→森林雑学ゼミ)。
そんなことから、今回の国際森林年の国内テーマは「森を歩く」。サブテーマが「未来に向かって日本の森を活かそう」「森林・林業再生元年」だ。


ちょっと国際森林年のサイトを見てくるね。あ、ロゴマークがあるよ。

・・・「Forests for People(人々のための森林)」というテーマを伝えるもので・・・

あれれ? 人々のため? 生物多様性保護と同じ、また「人間の利益のため」なの?

敏感になってるなぁ(笑)。
確かにそう読めてしまうけど、今回の世界レベルでの目的は、森林の経営・維持・保全の重要性について認識を高めることで、テーマはあくまで森林減少を食い止めることだ。


“for”じゃなくて“with”って感じになったらいいのになぁ。

え? “with”?

うん。“Forests with People”。“for People”を考えるのも重要だけど、その前に“with People”の気持ちを忘れちゃいけないと思う。
だって、森林は人間のためにあるんじゃないよね。森や地球環境がまず最初にあって、人間はそれを使わせてもらってるだけなんだから。

なるほど、確かにそうだね。
使わせてもらっているからこそ、森にはいって、森の声に耳を傾ける、森から学ぶことが重要になる。・・・だから“with”か。それは名言だなぁ!


ね? こんな話をしてたら、森に行きたくなってきた。
じぃじ先生、連れてってね。

 

 

 

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