資源を提供する、スギ人工林。
(東京・桧原村)
水源を守る、広葉樹・スギ混交天然林。
(京都・芦生)
レクリエーションや教育に、林冠歩道。
(大阪・万博公園)
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「ちょっと教えて」で、「国際森林年」の今年・2011年は、国内でも「森林林業再生プラン」がスタートする年として重要だ、といいました。
「森林林業再生プラン」とは、昭和期後半以来低迷する国内林業とそれに伴う山村衰微の問題を、どう処置してゆくかの対策です。2010年末に検討結果がまとまり公表されました。
このプランには、山村が元気を取り戻すためのベースは、基本的には山村の産業、林産業の活性化であること。そして、政策として、国産材自給率50%を目標にして、森林資源の経営・利用が担える意欲と能力のある担い手、計画や経営のカギを握るフォレスターなどの人材の育成、森林組合の強化、林道整備等産業基盤強化、などが挙がっています。
これらは、もちろん歓迎すべきことです。
しかし、生態学を根拠にした期待すべき森林の全体像や、合理的管理に欠かせない機能区分のあり方といった点に欠けているのが心配です。
これからの時代、各種の「生態系サービス」をフル活用してゆく必要があるのですから。
その「生態系サービス」。
2010年秋のCOP10でもキーワードのひとつで、以前にも少し触れましたが、今年国際森林年においても重要なテーマであるのはいうまでもありません。生態系の働きにより生み出されるあらゆる便益(物質資源・環境資源・文化資源)を意味する用語です。
生態系が人間に提供してくれるもので、食料や資材など物質的な資源は、昔から人間が利用して、注目されてきました。
それに加えて、たとえば森林の持つ水源涵養、国土保全、最近話題の二酸化炭素吸収貯留など、数々の環境保全的な働きも、風景をつくったり、快適性を提供したり、保健、教養など文化的な効用も、また生態系の生産物です。
しかしこれらは従来、「緑の効用」「公益的機能」と呼ばれながらも、実際の位置づけは、物質資源の副産物のようなものでした。
それらについて副産物の扱いではなく重要視しようというのが「生態系サービス」の考え方です。
人間が自然・生物界に求める様々な効用は、その生態系本来の生命活動から生まれくるもの。人間の幸福と福祉、すなわち安全で健康に恵まれ、衣食住も充ちた幸せな暮らしを支えるのは多様な生態系サービスであり、なかでも森林の生態系は、この定義どおりの代表的なものといえるのです(→下図)。
こうしたサービスを、人間が持続的に受けるためには、生態系が正常に保全されること。
それが基盤であることはいうまでもありません。
図 森林の「生態系サービス」
-―生態系の活動と諸機能・効用の位置付け(只木 1982, 一部改変)
(c)只木良也 2011
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