只木良也森林雑学研究室 本文へジャンプ

 
2012.10
じぃじ先生 ちょっと教えて
 

根っこはどうやって木を支えるの?

 

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台風の爪あと。生々しくて、痛々しい・・・。





T−R率は、一般の木と逆。
マングローブでは、タコ足以下が地中部の扱い。







枝でも幹でもない、これが気根。ここには何本の木が写っているでしょう・・・なんてクイズになりそう。





これって、根っこなの!?  なんと地上10m。
マレーシアの熱帯多雨林にて。





枯れたサクラの根の標本。
ほんとだ、側根は四方八方に這うように伸びるんだね。
京都植物園にて。





根がこんがらがってる! 
ポンプで土を洗い流したスギ林の様子がコレ。
(『森の生態』共立出版より)





「根切り」して移植用に梱包された木。
結構切っちゃうんだね。やっぱりちょっと心配・・・。

  台風、すごかったねぇ。

そうだね、あっちこっちで街路樹が倒れたそうだよ。

ニュースで見たけど、大きな木の根っこがむき出しになっていて、かわいそうな姿だった・・・。

そう。大きな木を支えているのは、言うまでもなく、その根っこだ。
しかし、街路樹などは周囲がコンクリートだったりして、根を張れる場所に制約があるだろう? どうしたって根の生育が悪くなってしまうんだ。
そうすると、当然ながら木は倒れやすくなる。


土と違ってどこまでも根を伸ばせないってことかぁ。
これくらいの高さの木を支えるにはこれくらいの根っこが必要、という、たとえば基準みたいなものはあるの?

大まかにいえば、植物の地上部と地下部の重量比率というのは、植物の種類によってほぼ決まっているんだ。
地上部は幹や枝葉、地下部は地中にある根のこと。それぞれの重量を計測し、比べたものの比だよ。


あ! マングローブの話のときの、アレだ!(→2010.09ちょっと教えて

お、よく思い出したな。その時に話した数字を覚えているかな。
陸上に生えている一般的な木で、幹や枝葉:地中の根の重さの比は3:1〜4:1。健全に成長している木は、そのくらいの比率になっている。
つまり、地下には、地上に見えているものの1/3くらいが隠れているということ。
対して、水中に育つマングローブは・・・。


数値が逆なんだったよね、確か。タコ足になっているところまでが根っこで、隠れている部分の方が多いんだった。

そう、マングローブは、地上部:地下部=1:3程度だったね。
こうした比率のことを、専門的には「T−R率(比)」という。
Tは木の地上部(top)の重量、Rは木の地下部(root)の重量、の意味だ。マングローブの場合は1/3、一般的な木は3〜4ということになる。

地下部といえば、タケを思い出すんだけど。地下茎がすごく発達するんだったよね。(→2010.7ちょっと教えて

そうだね。加えて、地下茎は地上の幹よりも内部が充実している。
ただ、タケは地下部ばかりでなく地上部もかなり大きくなるから、T−R率が極端に小さくなることはないよ。
これらに対して、森林に育つ木の場合は、森林成長にともなってT−R率は大きくなる傾向がある。


ええと、つまり地上部が大きくなるってこと? 木が育って、枝葉が増えるから?
でも、森林の中の木は、下のほうの枝葉がなくなっていくじゃない? そうなると、T−R率は小さくなるんじゃないの?

ああ、それはもっともな疑問だね。
でも、枝葉は落ちるけど、それ以上に幹は大きくなるんだ。だから、地上部が大きくなり、年令とともにT−R率は大きくなるという傾向が見られるわけだ。

熱帯に、枝から根がぶら下がってる木があるじゃない? それが地面に届いて幹のようになってたりする木。
気根って言ったっけ? あれは根っこにカウントするの? 

いやいや。TとRの意味ってなんだった? 
比べる重量は、枝や根といった部位ごとのものではなくて、あくまで地上の見えている部分と、地下にある見えていない部分についてだよ。


あ、そうか。じゃあ、気根は地上部として計算するんだね。

熱帯の植物といえば、板根というのを見たことがあるかい?

根っこの部分が、大きな板みたいになってる、アレのことかな・・・?

そう、アレだ(笑)。
板根は、土の中の根の発達の悪さを補い、安定性を保つ為に、地表に近い幹を四方へ板状に発達させたもの。幹の基部を広げて土の上に置いた形は、まるで発射前の宇宙ロケットのようだね。


でも、うっそうとした熱帯雨林の中ならいい土があって、根っこも伸ばし放題、張り放題な気がするんだけど。

実はね、熱帯の土壌というのは貧弱なんだよ。

ええ!? 雨も降るし、気温も高いし、生物もたくさんいるし、栄養たっぷりみたいな感じなのに!

一般的には、そんなイメージなのかな。
しかし、熱帯林の土壌というのは栄養をためるとこができないんだ。その気候のために、落葉・落枝などの分解が早すぎてね。したがって、根の発達も悪くなるというわけだ。


じゃあ、制約のない、いい土壌に木が植わっている場合、その根っこは自由奔放に、ず〜っと伸び広がり続けるの?

直根は当然、土壌の深さで制約される。一方、側根は、かなりの距離まで延びるよ。ただ・・・

ちょっと待って、「直根」「側根」って?

あ、ごめんごめん。「直根」は、まっすぐ垂直的に伸びる根で、杭の役目を果たすもの。一方、「側根」は、横に這うように伸びる根のことだ。
だから、直根の成育は土壌の深さ次第で、すぐに岩盤が存在するならばそこから先は伸びることができない。側根は広がっていくが、量としては、枝張り相当の範囲に8割が存在といわれている。


残りの2割の側根は、枝がある面積よりもさらに広がっているってこと?

そう。見えない地下で木を支えているんだよ。
よく発達した森林の場合、隣接する木同士が伸ばした根が絡み合っていて、そのことで森林が安定し、育つにつれ強固になる。
実際、スギ林に消防ポンプを持ち込み、強い水圧で土を洗い流すという実験をしてみたところ、スギは根だけで支え合って倒れることなく、その場に立ったままだったというんだ。


土がなくなっても!? おそるべし、側根の結束力。
・・・じゃあ、直根がやられちゃったら、ダメージが大きいのかな?

ん? 「やられる」というのは?

ええと、たとえば直根の部分を切ってしまうとか。

ああ、そりゃダメージはなくはないだろうけど、そんなに大きくはないと思うよ。
そもそも、直根を切ることは林業の手法でもあって、移植の時など、ごく普通におこなわれることだ。


え、そうなの?

うん。木を移植する場合、直根がそのままだと、深い穴が必要だろう? となると、植えにくいから直根を適切な長さに切ってしまうんだ。
「根切り」という手法だよ。
これはただ単に、木を植えやすくするためだけの作業ではない。実は、切った所から細根が沢山発生する、すなわち移植後の発達を促すことにという、根のためになる処置なんだ。


生け花の切り戻しみたいなものかなぁ。試練に耐えて育つんだね。

そう。木の地上に見えている部分は全体の7割くらいにすぎず、見えていない根っこが地下で木を支えている。
その、全体の3割くらいにあたる根っこが十分に発達していないと、木は倒れてしまう。
・・・というと、なんだか身近な例があるように思うんだが?


う〜・・・。勉強も同じで、根っこである基礎をしっかり身につけるのが大切ってことでしょ? わかってるよぉ。

 

 

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