持続的経営されるドイツトウヒ択伐林。
ドイツ・シュワルツバルド
熱帯多雨林を上空から。マレーシア
開発か発展か・・・。熱帯多雨林伐採跡
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前回扱った「リオ+20」(→2012.7森林雑学ゼミ)。結局、あまり盛り上がっては報ぜられませんでした。
日本政府は、玄葉外相演説のほか、日本パビリオン・ジャパンディなどを設け、東北復興と日本の魅力を訴えたらしいのですが・・・。
そこでは、環境保全と貧困撲滅に向けた「持続可能な開発目標」を、2015年までに策定することを再確認し、貧困対策などに力を入れるよう明記された、といいます。
しかし、20年前のリオの「地球サミット」から、地球の環境破壊はさらに進むのに、もうひとつ具体的に響いてくるものが少なく、実効性に乏しい会議結果に対し、批判の声も。
そんななか、持続可能な開発のために「グリーン経済(グリーンエコノミー)」が重要な手段、と認識されたのは、注目すべきかもしれません。
「グリーン経済」とは、将来も豊かな暮らしを続けられるよう、環境保全と両立した経済社会を目指して、太陽や風、生物などを利用した再生可能なエネルギーや、廃棄物の削減事業への投資、環境分野への雇用促進などを行うもので、環境問題への取り組みを経済の中心に据える考え方です。
とはいえ、「グリーン経済」はその場のキーワードとはなったものの、経済活動制限を懸念する途上国の抵抗は激しく、その活動は各国の自主に委ねられ、数値目標や達成時期の明記は見送られました。
ところで私は、前回から「持続可能な開発」という言葉を使ってきました。
正直に言うと私はこの言葉が嫌いなのですが、20年前のリオ・サミット以来、政府文書にはこの言葉があります。
ちなみに、英語ではSustainable Development。
Sustainableの意味は「持続可能な」であり、森林経営の基本である「保続」の意味で問題ありません。簡単に言えば、成長量を越えて利用しないということ。つまり、利息内で運用し、元金には手をつけないといったやり方です。
ところで、大きな問題は、developmentの解釈です。
20年前、地球サミットで使われたのは、持続的な「(人類の)発展」の意味でした。いつまでも人類が発展し続けられるため、つまり人類が滅亡しないために、の意味であったのは言うまでもありません。
ところが、この語は、わが国へ持ち帰られると「持続的開発」と訳され、政府文書等にそう記載されました。
デベロッパーという言葉が「開発業者」という意味であるのは、皆さんご承知のとおりで、辞書によっては、「開発」は「山野を切り開いて、産業を起こすこと」とあります。
わが国では「持続的な発展」よりも、こちらの開発の意味の持続と理解されそうな危険な言葉、あるいは、そう理解したい人の多い言葉なのでした。
さすがに、環境省と農林水産省は、単に「開発」と訳するのはできるだけ避けようとしたのでしょう。しかし、今なお、木が生えている場所を「未開発」のところ、「未利用地」「遊休地」とする見方は、日本では少なくありません。
それは、これだけ「開発」が進んだと見えても、まだ国土の2/3が森林というわが国の自然の豊かさのためです。
日本人にとっては、森林は「空気のような存在」。あって当たり前なのと同時に、それが無くなったら生きてはいけない大切な存在です。(→2011.12ちょっと教えて)
人間いかに威張ろうとも、この自然界を使わせてもらうこと、周りの自然からの資源、環境、文化形成の資源をもらわなければ、sustainableは不可能です。
人間社会がその理屈が理解できる人の集団となること。・・・可能でしょうか?
(c)只木良也 2012
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