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2017.06
森林雑学ゼミ
 

ドイツ研修旅行前に

 

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人類の故郷は森林。森から生まれ出た人類は、未知の世界で様々な活動を繰り返してきました――。
モデルは、当時の旅行でお世話になったドイツのMayer博士。

 

 京都府立林業大学校2年生は、毎年の初夏、ドイツへ研修に出かけます。
 本年も5月28日から6月4日まで、1週間ほどの短期間ですが、ドイツの森林・林業を自分の目で見、現場作業に直かに接し、彼の地の林業大と交流してきました。

 明治以来、ドイツは、わが国の林業にとって「先進国」でした。
 もちろんわが国の林業は歴史も古く、基幹産業のひとつでもありましたが、明治の文明開花期にまだ「学問体系」としては未完成。そこで、近代化に向かってドイツを見習ったというわけで(→2009.12ちょっと教えて)、私の大学時代(昭和30年頃)、「林学」生の第2外国語はドイツ語に限られていたほどでした。

 こうしたお手本ですから、ドイツ林業に接する研修旅行に大きな意味ありです。
 出発までの間、学生たちは事前学習に余念がありません。私も現地のイメージづくりのため、40年ほど前の写真ながら雰囲気だけでも伝わればと、スライド映写会を開催。今回は、そこからいくつかを。





 

 森林管理を担当する、地域ごとの森林に精通した官吏「森林官」。
ドイツの子供たちには、医者、飛行機パイロット等と並ぶ憧れの仕事なのだとか。彼らのカッコよい仕事ぶりを見れば、納得でした。




 

 ドイツの森林植生は、基本的に冷温帯の落葉広葉樹林と亜寒帯常緑針葉樹林。
 ドイツトウヒを代表樹種とする常緑針葉樹林地域で著名なのが、シュヴァルツ・ヴァルド(黒い森=常緑針葉樹林)と呼ばれる古くからの森林・林業地帯です。その森林を活かして、レストハウス、博物館、スキー場が。最近では観光・リゾートでも有名な地に。




 

 落葉広葉樹林の代表はやはりブナで、広く分布しています。
 写真は、国際的な企画で行われた森林のもつ植物量や生産力、物質循環などを調べるために置かれた観測試験地。ということは、すなわち代表的森林です。わが国のブナ林と比べて、下層植生の無さと、幹の「通直(つうちょく)」、すなわち真っ直ぐであることに驚かされます。




 

 幹が通直といえば、これ。なんと、ヨーロッパアカマツです。わが国では昨今マツ枯れ病 で激減したアカマツですが、マツ枯れ以前を思い起こせば、こんな「真直ぐによく伸びた」幹は、なんとも常識外。「これがマツ?」と驚いたのを覚えています。
 そしてアカマツ林も、林内地表の下層植生の乏しいこと。明るい林なのに・・・。

 

 農村の背後に続く丘陵地帯。わが国ならば里山雑木林の風景も、ここドイツでは、緩やかな斜面に畑と放牧地が広がります。
 米作(水田)が主流である我が国では、斜面が開墾されず、多くの森林が残りました。それらが、水、養分、農家燃料などを提供することで里山が成立。
 一方、ヨーロッパの農業は、麦畑と放牧地が主流。発展にともなって斜面はどんどん拓かれていったのが歴史的展開。開発過剰の反省が、250年前に自然保護思想を生みました。40年前の旅行当時には、工業生産を支える人々のレクリエーション用に、農地を森林に復活させているとも聞きました(→2016.4森林雑学ゼミ


 さて、ドイツ研修旅行の一行は無事帰着。後日には報告会を予定。どんなことを学んできたのか、何か心に響くものはあったのか、彼らの話を聞くのを楽しみにしています。



(c)只木良也 2017



 

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