ロンドン郊外の王立植物園キュー・ガーデン(Royal Botanic Gardens Kew/→2015.9森林雑学ゼミ、2015.10ちょっと教えて)。1756年創建の宮殿の庭園を起源とし、現在132haという広大な敷地に世界各地からの植物を育成展示するもので、世界遺産としても有名です。
そのなかに、植物園の特色ともいうべき「広大な芝生と巨木」とは対照的な、「日本庭園」がありました。
木造の勅使門を中心に、純和風の庭園の静かなたたずまい。
もちろん、勅使門といっても複製です。桃山時代建造の京都・西本願寺のものの4/5サイズで、1910(明治43)年、ロンドンで開催された日英博覧会を飾ったもの。
スタイルはいわゆる回遊式庭園。門を中心に石灯篭やつくばいが配され、水を使わず、滝、山岳、島、海洋をあらわす枯山水の風景が創り出されていました。
日本語でも記されている案内板によれば、庭園の着工は1995年、完成は1996年。
老朽著しかった勅使門の修復に合わせ、伝統技術を用いて日本庭園を築造・整備した、と。 日本からの寄付協力者としては、日本万博記念協会など10余りの名が。そのトップはなんと、京都府、京都市でした。それがなんとも嬉しくて・・・京都人ですから。
園内には、ジョージ3世一家も暮らしていたという邸宅Kew Palaceがありますが、建物と共に大きな西洋式庭園もまた、残されています。その姿はまさに洋風というのか、英国式というのか、左右対称の整然とした幾何学的な設計です。
自然風景的な日本庭園、人為建築的な西洋庭園。
そこに自然順応型のわが国、自然制御型の西洋という、自然に対する基本的対応姿勢がうかがえる、とは言いすぎでしょうか。
すなわち、降水量多く夏高温のわが国では、自然(森林)の回復力が強く、人の力に勝るので、「自然順応型」の思考と行動が育つ(→2013.1森林雑学ゼミ)。
一方、降水量がわが国の半分以下の西欧では、森林にはなるが、人力で改変した状態の維持が容易であるため、「自然制御型」の思考と行動が基礎となって文化を発展させた、と考えることはできるのではないか、と。
(c)只木良也 2015
|