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2015.03
じぃじ先生 ちょっと教えて
 

「土」ってなんだ?

 

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土。・・・今さらだけど、土ってなんだ?

 

 

 

 

あたりまえだけど、こんな大木を育てるのも土なんだ。

 

 

 

 

 

歴史ある建物の壁も、毎日お世話になっている食器も、もとは土なんだよね。きっと、ほかにもいっぱい。

 

 

 


森林の土壌断面。

地表近くの腐植が多くて栄養豊かな黒い層(A層という)は案外薄い。

その下に、腐植が少なく色の薄い鉱物質の層(B層)があって、そのさらに下にあるのが、土壌形成の骨格・母材基岩の層(C層)。

 

 



森林土壌と根。

養分を吸収する細根は、当然、栄養満点の表層(A層)に集中する。


 

 

道路開設のため、土壌は排除、母岩も掘削。

高度経済成長期、こんな光景っていっぱいあったんだろうな。

 

 



斜面の土がない・・・!
土石流の発生現場。大雨で、斜面の土壌が樹木もろとも谷を滑り落ちたらしい。

普段の雨なら、土が吸い込んでゆっくり流し出してくれるのに。 

 

 

 

 

土との付き合い方を間違えると、大変なことになる!

 「必要」と「やりすぎ」とのラインはどこなんだろう・・・。

 

国際土壌年。ちゃんと認識しよう。ちゃんと考えよう。「母なる大地」なんだから。

 

 
この前「今年は国際土壌年」って、じぃじ先生言ってたけど・・・

ああ、2015年の1年間は、International Year of Soilsとして設定された国際年だよ。


4年前にあった国際森林年(→2011.2ちょっと教えて)の土壌バージョンってこと?

そう。あれと同様に、2013年12月に国連総会で決議された。事務局は国連食糧農業機関(FAO)だ。


土壌ってことは、土の話なんだよね。
それ、国際的にどうこうっていうほどのことなの?

ん? どういう意味?


「土が肥えている、痩せている」とか言うじゃない? 土壌の違いによって生えている樹種も違ったりするでしょう。
そういうことはわかるんだよ。今までにもいろいろ聞いてきたし。でも・・・。

とんでもない! それは、確かに正解だよ。
だけど、土の役割・働きってそれだけじゃなくて、とてつもなく大きいんだ。


う〜ん。ちょっと待って、その国連決議、調べてみる。・・・国連広報センターのサイトに翻訳があったよ。

・・・国連総会は、(中略)土壌は農業開発、生態系の基本的機能および食糧安全保障の基盤であることから、(中略)優良な土壌管理を含めた土地管理がとくに経済成長、生物多様性、持続可能な農業と食糧の安全保障、貧困撲滅、女性の地位向上、気候変動への対応および水利用の改善への貢献を含む経済的および社会的な重要性を認識し、そして砂漠化、土地劣化および干害の脅威に対する取組は地球規模であり、かつ、これらの問題は発展途上国をはじめとする全ての国々が持続的な発展を遂げるために解決していくべき課題であることを認識し、(中略)2015 年を国際土壌年とすることを・・・

・・・えぇ!? そんな壮大なスケールの問題なの!?

わかった? そうなんだよ。


あ、そういえば、前にジオグラフィの授業で、土地が痩せていて水が十分にない地域での農業については、女性が水汲みの担い手として過酷な労働を強いられているということを習ったよ。

そう。そういうのも、問題・課題のひとつだね。


うわぁ、土っていろんなことに関連してるんだ。どこにでもあるから、あたりまえのものだと思ってたよ。
えっと、素朴な疑問なんだけど、「土壌」ってどこからどこまでのことを指して言うの?

いい質問だね。何についても、まず定義を確認するのは大切だ。
辞書風に言うなら、「地殻岩石の上にその風化物などが堆積したもの」だろう。もちろんそこの岩石の風化物だけでなく、火山灰のように他所から飛んできて堆積したものもある。
堆積の深さは一概に言えないが、土壌の深さは、わが国の山地で1m。平地の深いところで数m。地球の陸地全体では、平均すれば18cmの厚さとされる。


そんなに薄いの!?

衝撃の事実かな(笑)。栄養がゆたかな黒い表層土にいたっては、わずか10cm程度だ。


地球表面の薄皮みたいなものなんだ。
土って、自然が長い時間をかけて作ってきたんでしょう? ということは逆に言えば、長い時間をかけても、その程度の厚みしかつくれない貴重なものだってことだよね。

まさにその通り。ロシアの土壌学者が、もう100年以上も昔に「土壌生成の5要因」ということを言っている。
まず、土の原料、岩石、火山灰などの「母材料」、それを風化させたり変質させたりする温度や降水などの「気候」、日射・水、浸食・堆積などに関与する「地形」、有機物の供給・分解を受け持つ「生物」、そして土壌が完成するまでの長い「時間」だ。
その長さは万年単位、完全成熟土壌になるのは100万年かかるという説もある。


100万年!?  だめだ、本気で認識を改めなきゃ。

あはははは。その薄い薄〜い土壌の上に育つ植物、それに頼って生きる動物。
ヒトもそれに頼って生存を許されている動物の一種・・・と考えれば、土壌を大切にしなければ、という訳もわかるだろう。
そして、大切な問題がたくさんあることを認識してほしいな。


大切な問題は、さっき調べたように、経済、食料の安全、気候変動・・・。山盛りだね。

そう。まぁ、いろいろあるが、最大の問題は、地球上からこの大切な土壌がどんどん失われていることだね。それも、風や水の浸食だけでない、ヒトの活動のせいで、だ。
たとえば熱帯林の伐採。木々が伐採されて地表があらわになると、土壌表面に直射日光があたって土の劣化が進む。すると、直接の強雨で浸食も起こりやすくなる(→2010.8ちょっと教えて)。


自然の恩恵にあずかっていた人間が、自然をゆがめてしまう。で、それがめぐりめぐって人間にとって都合の悪い事態を招くことなり、対策に奔走しなきゃいけなくなる。人に都合のよい環境を得るために。
なーんか、名古屋のCOP10のときに「自然環境を守るの は結局人間のため」っていう話があったけど、それと同じだなぁ。(→2010.11ちょっと教えて)。

なかなか痛烈だな(笑)。だが、そのとおり。
かつての文明の地の発展もゆたかな土壌あってこそで、文明化が進み土壌を酷使するようになると、土壌は徐々に劣化して、結局は文明も衰退した、とよく言われる。
文明が自然の生態系を狂わせて、農林業の生産量の低下を招き、やがて人口が維持できなくなった。クレタ島、メソポタミア、エジプト、ギリシャ、ローマ、黄河・・・すべてに言えること。
そしてその状況は今日も続いていて、土壌の劣化は進行中。それは森林を衰退させ、環境悪化を引き起こす。そしてそれは人々の生活を破壊していく。


じぃじ先生の専門分野も、土との関わりが深いよね。

良い土が樹木の良い成長をもたらすのは言うまでもないが、たとえば森林が持つ、保水力や洪水調節力といった水源涵養機能(→2011.10森林雑学ゼミ)は、まさに土壌の働きがあってこそ発揮されるもの。
それから、有機物を分解して、植物が吸収できる無機栄養物に変えて供給している微生物たち(→2009.122010.11森林雑学ゼミ)。それらの活動場所は、ずばり土の中だ。
加えて、二酸化炭素のこと。


二酸化炭素は森林と関わっているけど(→2015.1ちょっと教えて)、土壌とも関係があるの?

あるある、大ありだよ。大気中の二酸化炭素濃度には、土壌から分解放出される炭素も大きな役割を果たしているのだから。
その動向によっては、地球温暖化を進めたり抑えたりすることになるというわけ。


直結じゃない、それって! 
聞けば聞くほど土壌の偉大さがわかる。そっか、「母なる大地」だもんなぁ。
そんな大切な問題には世界レベルで取り組まなきゃってことからの、「2015年・国際土壌年」「12月5日・世界土壌デー」なんだね。
あ、国際土壌年の応援ポータルサイトがあるよ。目指すところは・・・

・人間の生活において土壌が担う重要な役割について、社会的な認識の向上をはかる。
・食料安全保障(Food Security)、気候変動への適応と緩和、生態系サービス、貧困撲滅および持続的な発展に土壌が寄与していることを啓蒙する。
・土壌資源の持続的管理および保護のための効果的な政策や行動を促進する。


・・・大きく3つだね。

テーマも載っているんじゃないかな。


"Healthy Soils for a Healthy Life"・・・だって。

訳せば、「健全な生活のための健全な土壌」というところだろう。


健全な生活には健全な土か。なんとなくわかるね。
森林についても、その環境保全的な働きは土が支えているところが多い。さっき出た水源涵養機能みたいに。

国際社会が持続的な食糧安全保障を願うにあたって、人々に対して、適切な土壌管理を支援するための社会意識を育てることが必要、しかも緊急に。
それを世界的に訴えていこうというのが国際土壌年制定のねらいだ。


でも、こう言っては申し訳ないけど、今ひとつ盛り上がりが・・・。
国際森林年のときほど聞かない気がする。

そう、そこなんだよ。いまひとつ周知不足の感が否めない。
でも、さっき見たポータルサイトは1月に有志たちがオープンしたもの。活動はこれから盛んになっていくだろう


土がそれほど重要なものだとは思っていない人、絶対にたくさんいるよ。私自身が話を聞くまで、そうだったもの。
これを機会に、ちょっと気にしておこうっと。

 

 

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